いろはに要検討

インプット大好きなペンギン4歳

インターネットで偉くなった「カラーバス効果」

カラーバス効果って知ってますか? Color Bathと書き、「注意を向けているものにより注意を向けてしまう」という意味の言葉です。

例えば、「過去10分で目にした赤いものを答えて」と言われても答えられるものは少ないけれど、「これから10分間で目にした赤いものを答えて」って言うとたくさん出ますよね。

よく、「引き寄せの法則」とも一緒に語られており、検索するとたくさんのサイトが出てきます。どうやら、「心理学用語の一種」とのこと。

 

でも、それって違うみたいなんです。

 

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カラーバス効果は、2003年に出版された「考具」で初めて出てきた造語

以上が私の結論です。心理学用語ではありません。

その論拠について、これから説明していきます。

 

日本語の論文がない!!

CiNii(日本の論文を探せるサービス)で調べられる範囲で検索したところ、カラーバス効果についての論文が一切ないことに気づきました。

 

f:id:kariness:20180205142227p:plainたったの2件。しかも、雑誌みたいなやつなので、学術的な論文ではありません。

この時点で、心理学用語ではないのでは…? という予想が脳裏をよぎります。

(この文章が「特集 なぜ人は『99%のゴミ情報』に踊らされるのか」って特集で組まれた文章なところに、にこにこします。踊れ踊れ~!!)

 

英語の論文もない!!

まーね、日本語とかマイナーっちゃマイナーだしね。

ここは学術のメジャー言語、英語で調べましょう。というわけで、Google Scholarで"color bath"を入れてみます。

 

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おー! 割とあるやんけ!

と思いましたが、よくよく見てみると、印刷の話。「印刷技術について」とかいう論文が多いですね。

私の求めるカラーバス効果、英語論文もない。

 

由来は「考具」のようだ

結局、「カラーバス効果」というのは「考具」という書籍で語られた、個人が作った言葉なのでは? というのが私の結論です。

 

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

 

 

その論拠は、「この本の発売以前には『カラーバス効果』という言葉がインターネット上に存在しないから」

また、「この本の発売以降に初めて『カラーバス効果』という言葉を使ってインターネットに上がったページが、この本を引用元としているから」です。

 

もちろん、「これまで心理学界隈で秘伝のタレとして伝わってきたノウハウを、加藤昌治さんが書籍化しました」って可能性もあるといえばあるのですが、それは否定しましょう。

Amazonの「中見検索」で中が見えるので、カラーバス効果について一部を引用いたします。

 

カラーバス。聞いたことがありますか? バスはBATH。色を浴びる、ということです。方法は簡単。朝、家を出る前に「今日のラッキーカラー」を決めます。赤? 青? 黄色? 何色でも構いません。例えば「今日は赤だ!」と決めます。そしていつものように会社まで通勤してください。

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

 

この後も、ふんわりふんわりと話が進んでいて、ソースについては出てきません。

一言も「心理学用語です」とは言っていません。

 

2002年には検索結果に出てこない

「カラーバス効果」を期間絞込みで検索すると、2002年以前にこの言葉は存在しません。

以下に出ている2件は、ページのリリースは2002年ですが、記事の執筆は2003年以降のものでした。

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2003年12月、初めて記事が書かれる

All aboutさんですね。出典は「考具」です。

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それ以降の記事数

期間別にページ数を調べたグラフがこちらです。

"カラーバス効果"で、該当の1年を期間指定して揺れなし検索しました。

 

なんかちょっと2011年おかしいですが、流行り始めたのは最近みたいですね。

ここ10年以内に使われるようになった言葉、というのは確定でいい気がします。

 

 

ていうかこれ、「カクテルパーティー効果」じゃない?

調べてて思ったのですが、「カラーバス効果」ではなく、「カクテルパーティー効果」ではないでしょうか、これ。

人間の知覚って選択制だよね! というのを指す言葉で、ものすごく「カラーバス効果」に似てるというか、同じだと思います。

こっちはちゃんと論文にも辞書にもありますよ。辞書を引用しましょう。

カクテルパーティー‐こうか〔‐カウクワ〕【カクテルパーティー効果】

周囲の環境のうち、自分に必要な事柄だけを選択して聞き取ったり、見たりする脳の働き。カクテルパーティーの騒音の中で、会話をする相手の声だけを判別できるような選別能力をいう。カクテルパーティー現象。

デジタル大辞泉|大辞泉|小学館

 

以上、カラーバス効果は造語なのでは、でした。なんのソースもない言葉が、「皆が言ってるから」と広まっているのを見ると、豊川信用金庫事件を思い出しますね。

 

豊川信用金庫事件(とよかわしんようきんこじけん)は、1973年12月、愛知県宝飯郡小坂井町(現・豊川市)を中心に「豊川信用金庫が倒産する」という噂(デマ)から取り付け騒ぎが発生し、短期間に約20億円もの預貯金が引き出された事件。「豊川信用金庫騒動」とも。

豊川信用金庫事件 - Wikipedia

 

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