インターネットで偉くなった「カラーバス効果」
カラーバス効果って知ってますか? Color Bathと書き、「注意を向けているものにより注意を向けてしまう」という意味の言葉です。
例えば、「過去10分で目にした赤いものを答えて」と言われても答えられるものは少ないけれど、「これから10分間で目にした赤いものを答えて」って言うとたくさん出ますよね。
よく、「引き寄せの法則」とも一緒に語られており、検索するとたくさんのサイトが出てきます。どうやら、「心理学用語の一種」とのこと。
でも、それって違うみたいなんです。
カラーバス効果は、2003年に出版された「考具」で初めて出てきた造語
以上が私の結論です。心理学用語ではありません。
その論拠について、これから説明していきます。
日本語の論文がない!!
CiNii(日本の論文を探せるサービス)で調べられる範囲で検索したところ、カラーバス効果についての論文が一切ないことに気づきました。
たったの2件。しかも、雑誌みたいなやつなので、学術的な論文ではありません。
この時点で、心理学用語ではないのでは…? という予想が脳裏をよぎります。
(この文章が「特集 なぜ人は『99%のゴミ情報』に踊らされるのか」って特集で組まれた文章なところに、にこにこします。踊れ踊れ~!!)
英語の論文もない!!
まーね、日本語とかマイナーっちゃマイナーだしね。
ここは学術のメジャー言語、英語で調べましょう。というわけで、Google Scholarで"color bath"を入れてみます。
おー! 割とあるやんけ!
と思いましたが、よくよく見てみると、印刷の話。「印刷技術について」とかいう論文が多いですね。
私の求めるカラーバス効果、英語論文もない。
由来は「考具」のようだ
結局、「カラーバス効果」というのは「考具」という書籍で語られた、個人が作った言葉なのでは? というのが私の結論です。
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その論拠は、「この本の発売以前には『カラーバス効果』という言葉がインターネット上に存在しないから」。
また、「この本の発売以降に初めて『カラーバス効果』という言葉を使ってインターネットに上がったページが、この本を引用元としているから」です。
もちろん、「これまで心理学界隈で秘伝のタレとして伝わってきたノウハウを、加藤昌治さんが書籍化しました」って可能性もあるといえばあるのですが、それは否定しましょう。
Amazonの「中見検索」で中が見えるので、カラーバス効果について一部を引用いたします。
カラーバス。聞いたことがありますか? バスはBATH。色を浴びる、ということです。方法は簡単。朝、家を出る前に「今日のラッキーカラー」を決めます。赤? 青? 黄色? 何色でも構いません。例えば「今日は赤だ!」と決めます。そしていつものように会社まで通勤してください。
この後も、ふんわりふんわりと話が進んでいて、ソースについては出てきません。
一言も「心理学用語です」とは言っていません。
2002年には検索結果に出てこない
「カラーバス効果」を期間絞込みで検索すると、2002年以前にこの言葉は存在しません。
以下に出ている2件は、ページのリリースは2002年ですが、記事の執筆は2003年以降のものでした。
2003年12月、初めて記事が書かれる
All aboutさんですね。出典は「考具」です。
それ以降の記事数
期間別にページ数を調べたグラフがこちらです。
"カラーバス効果"で、該当の1年を期間指定して揺れなし検索しました。
なんかちょっと2011年おかしいですが、流行り始めたのは最近みたいですね。
ここ10年以内に使われるようになった言葉、というのは確定でいい気がします。
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ていうかこれ、「カクテルパーティー効果」じゃない?
調べてて思ったのですが、「カラーバス効果」ではなく、「カクテルパーティー効果」ではないでしょうか、これ。
人間の知覚って選択制だよね! というのを指す言葉で、ものすごく「カラーバス効果」に似てるというか、同じだと思います。
こっちはちゃんと論文にも辞書にもありますよ。辞書を引用しましょう。
カクテルパーティー‐こうか〔‐カウクワ〕【カクテルパーティー効果】
周囲の環境のうち、自分に必要な事柄だけを選択して聞き取ったり、見たりする脳の働き。カクテルパーティーの騒音の中で、会話をする相手の声だけを判別できるような選別能力をいう。カクテルパーティー現象。
以上、カラーバス効果は造語なのでは、でした。なんのソースもない言葉が、「皆が言ってるから」と広まっているのを見ると、豊川信用金庫事件を思い出しますね。
豊川信用金庫事件(とよかわしんようきんこじけん)は、1973年12月、愛知県宝飯郡小坂井町(現・豊川市)を中心に「豊川信用金庫が倒産する」という噂(デマ)から取り付け騒ぎが発生し、短期間に約20億円もの預貯金が引き出された事件。「豊川信用金庫騒動」とも。
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