「中高生の読解力」について
問題にケチつける奴ら、これそもそも読解力テストだから…。 https://t.co/9Rv8K9PJsj
— 雁ヶ音 (@karigane_h) 2017年11月7日
というわけで、突然の読解力とかのお話です。
「読解力が驚くほどない!!」というお話が、最近ちょくちょくとTwitterに上がっている気がします。
テスト結果が微妙らしいです。先程のTwitterの問題も教科書の文章なのですが、高校生の正答率は3割未満とかなんとか。
文章を以下に引用します。
メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である。
出典:帝国書院「中学生の地理」
こちらの問題について、「中高生の国語の読解力」についてではなく、それ以外の問題について考えてみます。
本当の問題は制作側の説明力の無さだったりしないだろうか
先程引用した教科書の文章は、出典にも書いたとおり、中学校の地理の教科書の一文です。
懐かしいなあ、帝国書院。私も帝国書院だった…。
ちなみにニュースの内容としては、「中学校の教科書なのに3割未満しか正答してくれない。読解力やべえ」というものです。
私もまあ概ねそれには賛成なのですが、まずはあえて「教科書の説明力のほうがまずいのでは?」という立場で考えてみようと思います。
作文力の無さ説
さて、もう一度文章を引用します。
メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である。
出典:帝国書院「中学生の地理」
別にこの文章は内容としては全然難しくないんですよね。
では何が問題かというと、一文長すぎなのでは?ということをあげてみました。
書き言葉は話し言葉より長くなりがちと言われています。なぜかというと、息継ぎがないから。息を継がなくていいので、続けられる限り永遠に文章を書けます。(わかるかどうかは別)
適切な文字数に関しては、ざっくりググってみた感じ、気持ちのよい文章の長さとしては1文が25文字前後とか言われてますね。
これについてはソース微妙なので、後ほど流行りの小説から平均でも出してみようかと思います。
私も文章のプロではないし、文章書くの自体さほど得意ではないので、長くて分かり辛いんだろなあ…。
とにかく、長い文章というのは混乱しがちです。代名詞が入り組んでしまって、「それ」がどれなのかわからなったり。
例えば、先程の教科書の文章は、文字数にして69文字。
なんと気持ちのよい1文の長さの2.5倍以上。長すぎるかも。
そんなわけで、「その出身国」の「その」がどこにかかっているのかで混乱しているものと思われるのですが、いかがでしょう。実際の内容として、「その」を復元してみると、
- メジャーリーグの選手のうち、28%はアメリカ合衆国以外の出身である。
- アメリカ合衆国以外の出身の選手の内訳は、ドミニカ共和国が最も多く、およそ35%である。
になると思われます。「アメリカ合衆国」がくどい!!
多分文章を書いた人は、この文章が頭の中にある前提で、「アメリカ合衆国以外の出身」を省略して、代名詞の「その」にしたと思われます。そう考えると、まあ、仕方ないなという気もする。
でも、文字組の調整もあるでしょう。いくらわかりやすさをとりたくても、二度も「アメリカ合衆国以外の出身」なんて使えないかも。文字数が増えると改ページがなんちゃらで死ぬのが紙本の編集さんだ。
となると…私ならこうしてみます。
メジャーリーグの選手のうち、アメリカ合衆国以外の出身の選手の内訳は28%となっている。ドミニカ共和国はその中で最多の35%を占める。
……いや、ごめん。正直変わらなかったかもしれない。
構成の問題説
問題とか教科書の実物がないので想像の域を出ないのですが、「元々教科書に掲載されていたときは、文章にグラフがついてるタイプのやつだったりするんじゃない?」と思いました。
つまりどういうことかというと、下のようなことです。
引用:【画像】教科書の文章、理解できる? 中高生の読解力がピンチ - ライブドアニュース
もしもこのように表示されていれば、誰も混乱はしないはず。
そもそも教科書がこのように図と説明セットのものとして表示されているのであれば、説明文だけ持ってきて「説明文わかんねえんだよ!!」ってキレるのは確かにナンセンスだと思います。だってそういう仕様じゃないから。
味噌汁から出汁を抜いて「なんだこれ!味噌の汁じゃねえか!味気ねえ!!」って言ってるくらいちょっとアレだと思う。
どういうふうに設問を作ったのか気になるなあ…。ちょっとテスト受けてみたいかも。
実際読解力は低下しているのか
Twitter見てると「読解力が低下してる!ゆとり教育!」みたいな人が結構いた。
わかるわけないよ~。だって同じ状況で取った過去のデータがないんだから。
「現状がひどい」のと「昔は良かった」は必ずしも両立しない。昔はもっとひどかったかも。忘れてるだけで。
なので、「中高生の読解力がピンチ」に対して、「読解力が低くなってる」と結びつけてる人は、皮肉ながらまず読解力鍛えてきたほうがいい。
あとは、「Twitterのコミュニケーションもできない大人が多いのに」みたいな意見も散見してましたが、ある種仕方がないところもある。
140文字以内でしかやりとりできない環境も異常だし、SNS自体も最近できたものなので、そもそも「相手に正しく意見を伝えるための文章の書き方」を日常的に気にして成長してないから。
レポート書くのとインスタバエも違うし。
煽られて怒っちゃうとかは、SNSのコミュニケーションだから、SNSやってない人ができないのは当たり前だし。140文字しかお話できないのも難しいよなあ。
「インターネットは楽しいですが、画面の奥に人間がいるんですよ」をいまいち把握してるのかわからないネット弁慶も元気だし。
そんなわけで、Twitterを始めとするSNSは、新しい特殊な環境のような気がするので、教科書問題とは別な気がする。まあネタなんだろうけど。
それはさておき、現代の中学生・高校生の絶対的な読解力はやっぱり低いと思いました。
というのは、このグラフのやつよりニュースの下部に書いてある文章のほうがひどかったから。
似た文章を比較する問題でも誤答が多かった。調査では、やはり中学校の社会科の教科書にある「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」という文と、「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」が同じ意味かを尋ねた。幕府と大名の関係が入れ替わっているため、正解は「異なる」だが、中学生の42%、高校生の27%が「同じだ」と答えた。
正直こっちのほうが「まじかー…」って感じがする。
この比較の問題について、文章はふたつある。
- 幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた
- 1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた
ふたつの文章を「幕府」について考えてみると、
「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」の文章は、
- 幕府は命じた
となる。
また、「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」の文章は、
- 幕府は命じられた
になるのである。